2008年04月07日

学校のズル休みは親への罰金

2008年4月6日のPolitikenで、正当な理由(病欠、学校と約束しての旅行休暇など)のないまま、長期間にわたって学校へ出席しない生徒がおり、それに対して教育大臣ベアテル・ホーダー(Bertel Haarder)は、生徒の親への罰金で対応する措置を今週中にも提案する、という衝撃的なニュースを読んだ(教育省のページに詳細な記述あり)。記事によると、多くの生徒たちが、年間20日以上という長期間を正当な理由なく学校を欠席する状態があり、事を深刻に捕らえた大臣が、Muusmann Research and Consultingという外部コンサルティング会社に依頼し、その現状と対策を分析させたものが、2008年1月にレポート、「長期間にわたって授業を受けない子どもたち」(PDFファイル)に帰結した。年間20日以上長期欠席をしているのは、生徒全体の1,2%に当たり、デンマーク国内に換算すると6,300人程度となり、25人学級を原則とするデンマークでは、ほぼ4クラス当たりに1人が該当する計算になる。

彼らの調査によると2006年9月1日から2007年4月30日までの間に、市町村、小中学校の学校長などに対して質問紙調査を行い、学校の56%から、市町村の72%から有効回答を得たという。うち、欠席日数が20日から40日、41日から65日、66日から90日、90日以上という4つのカテゴリーに分類した。回答のあった学校の生徒の長期欠席率をデンマーク国内全体で換算すると、6,300人が相当することになり、このうちのさらに8%(つまり500人程度)はこの期間内に90日以上欠席したことになる。7年生から9年生(いわゆる日本の「中学生」)がドロップアウトしてしまう危険性が最も高く、その割合は76%にもなり、うち41%が女子、59%が男子生徒である。 

自宅に住んでいる未婚の子どもを抱えた親には、通称「子ども小切手」と呼ばれる児童手当が、18歳未満の子どもに親権をもつ親(基本的には母親に対して支払われるのが普通)に対して、四半期毎<つまり3か月分まとめての額>に支払われる。(2008年水準)
0−2歳 3,539kr(約81,000円)
3−6歳 3,198kr(約73,000円)
6−17歳 2,516kr(約58,000円)
*より正確には、自宅には住んでいなくて寄宿生活をしているような子どもの親にも支払われるが、親の生活に問題があり、施設生活をしているような子どもの親には支払われないという規定がある。

これを子どもを学校へ通わせない親に対しては自動的に天引き、あるいは支払わないようにして、罰則を加えようという提案なのである。デンマーク国民党からは既に1週間の不当欠席で2,000kr(5万円弱)の罰金にしようという具体的な提案が出たり、ホーダー教育大臣も「態度が悪かったり、物を壊したり、学校に通わなかったりする生徒やその親に対しては、更なる措置の必要」を検討したい、とBerlingske Tidendeに対して語っている。

上記報告書は、どれくらいの数の生徒が長期欠席しているかという状況を調べたものであるが、それによって罰金措置を取ることを奨励はしていない。数を「科学的データ」として盾に取った政治家たちが、とくに社会的・家庭的背景から問題行動を取りがちな二言語児を親とともに罰することに繋げようとしているように見える。なお、この「二言語児」という言葉は、英語では「バイリンガル」となるが、「二つの言語に流暢な」といったポジティブな意味ではなく、「別の言葉を母語に持ち、国語(デンマーク語)力に劣りの見られる」といった感じに、家庭に移民背景を持つ子どもに対してネガティブなイメージを持って語られるのが普通である。

Haader og Mary.jpg

いじめなどの問題も顕在化してきて、「一緒にいじめに対抗しよう」といったイニシアチブを初めとして、「子どもを救え!」(写真が見られます)でも人気のあるマリー王妃(Kronprinsesse Mary)を出して、子どもたちにいじめはいけないといったキャンペーンを行うなど、メディアでも語られるようになってきている。王妃が裕福な層のデンマーク人の子どもばかり通う保育園へいって、国旗を振って歓迎する子どもたちにぬいぐるみを渡して「いじめはだめ」と語りかけることで実際にどれだけの有効性があるのかということは問われるべきだと思うが、キャンペーンとしてはそんなものだろうか。

いじめや社会的背景から学校へ通うことができない子どもに対して、罰金で縛りつけて、「修了」という数値目標の達成ばかりを考えているのは明らかに筋違いである。Politikenの記事にある学校の校長の話として載っているが、「助けを求めている子どもはいるけれど、罰則を求めている子どもはいないのだ」というのが現状を物語っている。自己責任の名の下に、弱者を救い出す道を閉ざし、さらなる締め付けを行おうとする政策には反対しなくてはならない。

現在の状態でも、すでに「子ども小切手」から天引きするようなやり方はシステム上可能であるようだが、まだよほどのことがないとそれほど着手されていないのが現実のようである。Politiken、2008年4月6日の一面のコラムは以下のように結んでいる。
(前略)何よりもまず、学校へのうんざりした気持ちと、若者を遠ざけている教育への失われた敬意を何とかしないとならないだろう。ならばなぜ、アウトリーチとしての両親への協働やモチベーションを高めるような学校活動といった、既存のよい経験に耳を傾けようとしないのか。もちろん、これらは簡単な課題ではない。しかし、課題を自らより難しくすることから始めては、簡単になるはずはない。
なぜ、子どもたちが長期欠席という「楽しくない」現実を積極的に選択しているのかという事実に目を向け、不十分な点に対する対策を考える必要があるといえるだろう。
posted by Denjapaner at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育事情 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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