酒を飲み航海に出て、略奪や植民をしていたヴァイキングは北欧の海賊だが、1000年以上経ってもアルコールや薬物の濫用によって、暴力行為・犯罪を起こすケースは末裔たちに引き継がれている。(もちろん先祖の血がどうのなどというつもりはなく、ただの話のスタートです)
デンマークでは、日本のように喫煙や飲酒などに関して「20歳から」という明確な規制はなく、法律上は「16歳未満の若者に対してアルコール飲料を販売してはならない。販売した場合には店舗側に罰金が科せられる」(数年前まで15歳未満であったが、ヨーロッパの比較調査の結果、デンマーク人青少年のアルコール濫用があまり酷い現実を晒したため、16歳に引き上げられた)ということと、「レストランやバーなどは18歳未満の若者に強いアルコール飲料(ライトビール程度ならOK)を提供してはならない。した場合には、提供した側と買った/頼んだ/飲んだ者に対して罰金が科せられる」という点だけである。つまり、16歳未満であっても親が買ってきたアルコール飲料を自宅(両親の裁量に任されている)で飲んだり、上級生に買出しに行ってもらって仲間内で飲んだりしている分には全く規制はない。
デンマークの若者のアルコール消費に関しては、以下のようなエピソードが挙げられる(保健管理庁のデータより social & Hälsovårdsnytt参照)。
*1984年には15歳のデンマーク人のうち、毎週飲酒をしていると答えたのは、男子の15%、女子の20%であったが、1998年には男子46%、女子38%まで上昇した。
*30%のデンマーク人の子どもは人生最初のビールを11歳の時に飲んでいる。
*早期の「アルコールデビュー」は後年、大量のアルコール消費につながる危険性を高める。
*中学校3年生のうち、17%の少年と12%の少女がすでに成人の適正限界量とされる週に男性は21単位、女性14単位を上回る、大量のアルコール消費をしている。
*中学校3年生の大量飲酒者のうち、5人に4人は12歳あるいはそれ以前に飲酒を始めた。
*アルコール大量消費をする者は、学業も振るわない。
*11歳の少年のうち20%は酔っ払ったことがある。
*11歳の少年のうち20%は先月1ヶ月の間に飲酒をしたことがある。
*デンマークの親は子どもに対してアルコールを導入するのが早い。
*中学校3年生の男子のうち20%は、飲酒のため喧嘩をしたことがある。
*中学校3年生の少年のうち10%超が、飲酒により警察と問題を起こしたことがある。
*中学校3年生の少女の5%と10%の少年がアルコールが効いている状態で車やバイクを運転したことがある。
こうした飲酒行動に加えて、薬物の濫用が青少年の間で広がってきており、メディアでも大きく取り上げられている。アルコールや薬物が効いている状態で青少年が犯す暴力事件がメディアを賑わすようになってきたからである。このところ大きく取り上げられているのは、15歳の少年が偶然に通りかかった48歳の男性を殺してしまったオールボーでの事件である。オールボーでは、エクスタシー1錠はほんの20krで買えるという。
とくに近年、エクスタシー、コカイン、アンフェタミンといった覚醒剤は、デンマークの青少年に人気らしい。90年代半ばにはコカインは、お金持ちしか手に入れられない高級品だったが、この2年から5年くらいの間に覚醒剤の価格は急激に下落したため、放課後のアルバイトなどで働いたお金で簡単に買えてしまうと、オーフス大学に所属する、薬物等中毒研究所所長のマズ・ウッフェ・ペーダーセン(Mads Uffe Pedersen)はいう(Politiken、2007年12月19日)。Politikenによれば、500mlのビールをお店で飲むと45krかかるのを目安として、エクスタシー1錠はコペンハーゲンでは50-70kr、フュン島では40-50kr、コカイン0.3gは200kr、アンフェタミン0.2gはコペンハーゲンで50kr、フュン島では20-40krで買えてしまうことを挙げ、いかに若者の間で安易に「いい気分になる」代替手段となっているかを危惧している。
過去10年の間に15歳から17歳までの若者による暴力事件の検挙数は3倍になった。傾向としては大都市よりも、地方都市のほうが若者のアルコール・薬物の濫用は酷く、とくに15歳から17歳までの人口1000人当たりで比べた際に、フュン島のフォーボーという街では検挙された者が人口1000人当たりのべ28,6人となり、最悪の数ということがわかった。これに対して、コペンハーゲンは7,9人、第二の都市オーフスは4,9人となった(Politiken、2007年12月17日)。
この原因について、犯罪学者であり法務省研究部門長である、ブリタ・キュスゴー(Britta Kyvsgaard)は、地方都市で薬物の氾濫を原因として他の犯罪間でも拡大していったのではないか、また大都市に住むのには非常にコストがかかるため、社会的に問題を抱えた家族は金銭面から地方都市に住まざるを得ず、それが地方都市での暴力事件などの犯罪につながったのではないか、とこうした原因を分析している(2007年12月17日、Politiken)
オールボーで男性を殺した15歳の少年は、暴力行為の後、自分の携帯電話で瀕死の被害者をビデオに撮影していたという。これまでは、「相手を倒したら終わり」だったものが、倒れただけでは飽き足らずその上さらに暴力を加え、致命傷を与えるような非常に凄惨な傾向にあるといわれる。SSPと呼ばれる学校・社会・警察の協力に基づいた(「風紀・青少年健全育成」といったもの)では、青少年によってなされた犯罪で、アルコール・薬物が関わっていなかったものは記憶にないというほどにだという(上記Politiken)。
こうした薬物・アルコールが簡単に手に届くところにあり、コントロールが十分でない現実は、とくに影響を受けやすい青少年にとっては深刻な状況といえる。アメリカやフィンランドで起こったような銃による犯罪は、まだデンマークでは起こっていないが、ここ数週間のうちには郊外での銃撃事件も重ねて発生しており、青少年の犯罪と重なれば学校での無差別発砲事件が起こってもおかしくはない。
犯罪と貧困の相関はよく指摘されている通りであり、デンマークも例外ではないが、豊かになったデンマークの内部に抱える貧困層がアルコールや薬物の手によって罪を犯し、社会の逸脱者となっていくサイクルは残念である。親がアルコールを子どもに「導入する」のもかなり早い時期だといわれるデンマークだが、法規制ならずとも何らかの形での規律化は必要なのではないだろうか。
2007年12月19日
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