2007年10月20日

廃止された教育政策は、世界の見本

書きたいことは色々あるが、なかなか滞っていて進まない更新だが、応援するように(?)毎日覗いてくれる方がいるので、少しずつ書き進めていきたい。(詳細について知りたいテーマなどがあれば取り上げますので、コメントに書いてください)
このところ、考えているテーマは、デンマークの医療現場の現状、デンマーク人著名環境学者のこちらでのメディアでの取り上げられ方、そして廃止となったグループ試験の動向などである。

グループ試験というのは、デンマークらしい試験の仕方として、長い間根付いていたが、新自由主義に流される政府の方針の中、個人の貢献度を測ることを目的として2005年秋に廃止が決定され、2006年以降順次廃止されていった。デンマークでは、中学3年生までは一切試験らしき試験はなく、中学校の卒業試験からはこれまでは13のスケールで成績が付けられてきた(このスケールも変更されたことは前項参照)。大学での成績も、同様に13のスケールで付けられてきたわけだが、とくにオールボー大学、ロスキレ大学といった、新しい教授法で学生と共に斬新な教育観を作ってきた大学では、Project-based workと呼ばれる、課題を自ら発見・解決し、それをグループで調査・研究することでレポートを協同で作り、提出する方法をもって、重要な授業としてきた。そして、大学側もこの教授法により、自ら課題を見つけ、解決する力をつけたクリエイティブな力を持った学生を育てることで知られており、これは就職の際も卒業生は企業側から歓迎される等の効果を生んでいた。

しかしながら、現行政府は個人の学力や貢献度を測るのに、グループ試験ではわからない、レポートを書くにしてもその個人が○○ページから××ページまで執筆したということを明らかにすべきだ、といった主張で、グループ試験自体を廃止してしまった。多くの学生たちが反対し、デモンストレーション(2006年5月2日にはデンマーク全国の6箇所で同時に開催され、6万人以上の学生が集まった)をしたり、署名を集めたり(4万2000名が集まった)したが、なしのつぶてだった。

それが、今日になって世界中の各国から、グループ試験(グループワーク)が、学生の創造的な力を高める上で企業で開発をするチームなどに貢献していくといった理由から、注目を集め、オールボー大学に視察団が押しかけるという皮肉な結果となっている。オールボーでプロジェクトグループ試験という課題に取り組んでいる、アネッテ・コルモスによると、この点においてオールボーは「世界的に知られて」おり、「南アフリカの人がオールボーがどこにあるかを知っているほどだ」という(2007年10月19日Politiken)。インドのカルカッタ大学からデンマークをモデルとするよう視察に来ている例がIngenioeren(2007年10月19日)に紹介されているが、インドだけではなく、本文中からも「政府が枠組みだけではなく、教育の内容にまで干渉してくるというのは考えられない」というコメントを残しているアメリカやオランダ、オーストラリアの例もあり、リベラルな教育の危機は一層感じられるといってよい。ブラジル、中国、タイ、マレーシア、サウジアラビア、ロシアといった各国からも視察団が来ているという。

指示されないと何をしてよいかわからない「指示待ち人間」が増えているといわれる日本でも、グループでの作業経験から、創造性を備えた若手の育成が望まれるのではないか。この点においては、もはやデンマークから習うことはできないのかもしれないが、個人の業績・貢献を偏重することで失われるものがあることへの教訓となっているように思う。
posted by Denjapaner at 05:52| Comment(0) | 教育政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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