2007年09月20日

失業対策は、社会的弱者への締め付けか

以前の記事で失業(給付削減のための)政策として「300時間ルール」というものが導入されたことを述べたが、この政策が現実にはほとんど実効性をあげていないという批判的記事がPolitiken(2007年9月20日)に出た。

コンタントイェルプと呼ばれる、市からの生活保護給付金(詳細は、上記リンク記事参照)の受給資格者を減らすことで、より多くの失業者を動機付けて労働市場に送ろうというのがこの「300時間ルール」の大義であった。しかしながら、発効して数ヶ月が経った今、どれだけ効果があったかどうかが厳しく問われている。Ankestyrelsen(「上訴庁」とでも訳されるか、社会省の下部組織であるが、独立している庁・局といったものに当たる)によって出された報告書によると、この施策の実施後には、9000人の生活保護受給者がその権利を失うことを警告され、その結果、2%の者が正規労働に就き、11%が時間給労働に就くことになったが、それと同時に、大部分の者たちが意図しなかった方向、労働市場と逆の方向に向かうという結果になったという。つまり、30%が病気や育児、マッチグループ5と呼ばれる、労働市場で働く能力が全くないと見なされるグループ(つまり生活保護も剥奪されない)に所属をするという結果となり、8%は精神障害者年金を受給をすることになった。このマッチグループ5というのは、重度の疾病等を理由に働くことが免除される「聖域」グループであり、今回このグループに入れてもらうために、自分の病気を実情よりも重く申告したものもいたのではないかとコペンハーゲン・コムーネの担当者は見ている。

与党である自由党のイェンス・ヴィビャー(Jens Vibjerg)は、「どんな場合も、システムの抜け穴を通る人がいるであろうことは否定できないが、このルールが機能するための責任とツールを持つのはコムーネだ」と強調し、成功だと見るのに対して、急進自由党と社会民主党は明らかな失敗と見ている。エリザベト・ゲデイ(Elisabeth Geday)は、こうした施策よりも職業訓練や給与補助金を与えることが、結局失業者にとって適当な仕事を見つけることになるのではないかと提案している。今回の施策の施行後、ちょうど400人が生活保護給付金の受給資格を失ったという。

デンマークでは、次々と新しい政策が出され、法律も変わるが、メディア全体がそれを批判的に検証する姿勢を常に持ち、その結果、効果がない/失敗だったとわかれば、またすぐにそれを改めるようなフットワークの軽さがある。人口500万の国なのでできることであり、日本で同じことをしようというのは難しいだろうが、いずれにしても「施策の批判的検証」という点は日本のメディアに大きく欠けている点だと考えている。(なぜ社会事件ばかりを取り立てて大きく騒ぎ立てる傾向があるのだろうか。)

まだ実施後間もないこともあって、今回の批判を以ってすぐにこの「300時間ルール」が改正されるとは思われないが、もともと波乱含みのままスタートしたルールだけに、今後の道行きは怪しくなりそうだ。
posted by Denjapaner at 17:12| Comment(0) | 社会福祉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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