2007年07月26日

福祉国家の失業給付の現状と未来

デンマークでは失業率は、ヨーロッパでは極めて低い方に位置し、その傾向は好景気にある現在、さらに強まっている。2007年5月の最新のデータでは失業者は、フルタイムの仕事で見た場合に99,600人となり、これは労働力全体の3.6%に当たる。この失業者に対して、どのような福祉給付をしているのか見てみよう。

まず第一に、失業時の福祉手当としては2種類のものがある。ダウペンゲと呼ばれる失業給付と、コンタントイェルプとと呼ばれる生活保護給付である。生活保護給付は妊娠や病気といった事情により労働に従事することができないものに対して、コムーネ(市)からなされ、基本的に誰もが受給する権利を持っている。それに対し、失業給付は、A-Kasseと呼ばれる失業保険に加入しているものに受給権があり、この保険費用は被雇用者が給与から引かれている。そのため、失業給付金の方が給付額が高いが、いずれにしてもどちらか一方しか受給できない。

例えば、この失業給付の受給権については、「病気、(育児)休暇を理由にして受給を請求するまでに、少なくとも13週、かつ計120時間以上、職場で働いていたこと」「自営の場合には、少なくとも6ヶ月以上自分の会社を経営していたこと」を課している。病気を理由とした失業給付は、18ヶ月間に渡り52週間を上限として支給される。そして、その額は、一週間に 3.415,00 kr.(7万円強。課税前)を上限としている。

生活保護給付については、地元の職業安定所に登録すること、就職のための努力を十分に重ねること、失業中の生活をカバーできるだけの資産を所有していないことを条件に支給される。最初の6ヶ月の支給額は以下の通りである(月額・課税前)。25歳未満で親と住んでいる場合は2.786 kr.、実家を出ている場合には5.773 kr.、そして妊娠している場合には8.959 kr.、扶養家族のいる場合には11.904 kr.が2007年の水準となっている。25歳以上で実家を出ている場合には、8.959 kr.、さらに扶養家族がいる場合には11.904 kr.となる。

こうした失業時の福祉手当の受給者を減らし、一人でも多く労働市場に人々を送り込むことを政府は「成功」と呼ぶわけだが、そのために数々のアクティベーションを行っている。雇用能力を高めるためのコースに参加することを初めとして、職安で回してもらえる仕事に対して、積極的な態度を見せないと受給額を減らされるなどといった罰則があり、特に30歳未満の者に関しては訓練教育を中心とした厳しいものとなっている。

このところ語られる施策では、2007年4月1日に発効した「300時間ルール」が挙げられる。これは、夫婦のうちどちらか最低でも過去2年間に300時間以上働いていない場合に、片方の生活保護給付金を失うというものである。2年間で300時間とはそれほど厳しいようでないように見えるかもしれないが、これまでは150時間の限度となっていたので、それに比べるとどれだけ急激に締め付けが始まったかがわかる。現実に、困難に窮するのは病気で働くことのできず、子どもを持った移民の家族である。

2007年7月9日の日報Informationによると、この300時間ルールという施策によって生活保護を失う者のうち、実に92%をデンマーク以外の民族背景を持つものであり、さらに75%の生活保護受給者が病気であったか現在も病気を患っているという。つまりこの政策は暗に、移民に対してデンマーク国民が税金から支払った福祉を享受させないために、打撃する目的で作られたか、あるいは少なくともそういった効果を挙げているといえる。

さらにInformationの記事によると、エスビャーコムーネの事例によると、63%の生活保護受給者は、3人かそれ以上の子どもを持つ移民であり、トラウマに悩まされる難民であったり、母国での教育を十分に受けていない移民であったり、病気がちであったりし、到底働ける状態にないという。この政策に批判的なエキスパートは、このことにより離婚・別離が増えたり、子どもたちの生育状況にも支障をきたすことを危惧している。

デンマーク語の教育の機会はどの移民にも与えられるが、母国で教育を十分に受けていないものにとっては、新しく言葉を習うという以前にその前提がないものも多い。しかしながら、現実には清掃等のノンスキルの仕事に従事しようにもコースを取った証明書といったものが課され、デンマーク語のまったくできないものにできる仕事はほとんどないという。

福祉国家の高額の失業手当により、就業のモチベーションを失うといった点も、日本の研究で言われていたように思うが、その権利も「眠っていて与えられるもの」ではなく、常に揺り動かされているものであることを思い知る。
posted by Denjapaner at 06:21| Comment(0) | 社会福祉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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